※ドラマ『マイ・フィクション』第6話までのネタバレを含みます。
『マイ・フィクション』を見始めたものの、「これって面白いの?」「途中から方向性が変わった?」と感じている方もいるのではないでしょうか。
第6話まで見た感想を先にまとめると、序盤の「何が起きているの?」という面白さから、「なぜこんな人生が作られたの?」という面白さへ変化していくドラマだと感じます。
そのため、本格的な犯人当てミステリーを期待すると、途中から物足りなく感じる可能性があります。
一方で、記憶を書き換えられた人間の人生や愛情に注目すると、むしろ中盤から面白くなってきます。
実際、視聴者の感想も「毎話面白い」という声がある一方、「謎が早めに明らかになってしまう」という意見があります。
つまり評価が分かれる最大のポイントは、この作品を「謎解きドラマ」として見るか、「記憶と人生を扱ったヒューマンドラマ」として見るかではないでしょうか。
ここでは第6話までの展開を踏まえながら、『マイ・フィクション』が面白いところ、逆に面白くないと感じやすいところを整理します。
①『マイ・フィクション』はどんなドラマ?まず前提を整理
■①最初は「自分だけ忘れられた」という強烈な謎から始まる
『マイ・フィクション』の主人公は、玉森裕太さん演じる伊川正樹です。
正樹は事件件数ゼロを誇る森沼ネクスタウンで、妻の真弓と平穏に暮らしていました。
ところが転落事故に遭い、意識を取り戻して自宅へ帰ると状況が一変します。
妻が自分のことを覚えていません。
さらに自宅では、別の男性が「伊川正樹」として生活しています。
妻だけではなく、職場や周囲の人間まで正樹を知らないと言います。
ここで視聴者にも、「正樹の記憶がおかしいのか、それとも周囲がおかしいのか」という大きな謎が提示されました。
第1話の時点では、かなりミステリー色の強い作品に見えます。
■②ところが正樹の記憶だけが問題ではなかった
物語が進むと、単純な記憶喪失では説明できない事実が次々と判明します。
正樹が自分の大学時代だと思っていた記憶には、岡崎史也という別人の人生が入り込んでいました。
さらにDNA鑑定によって、正樹の身体は二宮由梨の夫・二宮祐介と一致します。
つまり「伊川正樹」という人間の存在そのものが怪しくなります。
さらに妻の真弓にも秘密がありました。
彼女の正体は、7年前に夫を殺害したとして懲役10年の判決を受けた石野奈々美です。
本来なら服役しているはずの人物が、なぜ「伊川真弓」として生活しているのでしょうか。
▼第6話までに見えてきた構図▼
- 伊川正樹の身体は二宮祐介と一致する
- 正樹には自分が経験していない記憶が含まれている
- 妻・真弓の正体は石野奈々美
- 奈々美も本来とは異なる人生を送っている
- 複数の人物の記憶が人為的に操作されている
ここまで来ると、「正樹を忘れたのは誰?」という序盤の謎から、かなり違う話になっていることが分かります。
■③第6話で科学的な仕組みが見えてきた
そして中盤になると、物語の裏側に科学的な実験が存在することが見えてきます。
記憶を書き換える技術と、それを利用した囚人更生の計画です。
ここで「なぜ周囲の記憶がおかしいのか」という大枠の答えが見え始めます。
そのため第1話から巨大な謎を追ってきた人ほど、「もう仕組みを説明するの?」と感じる可能性があります。
逆に、ここから作品の本題が始まったと感じる人もいるでしょう。
この違いが『マイ・フィクション』の評価を分けているポイントです。
②『マイ・フィクション』は面白い?第6話まで見た感想
■①「自分の人生が偽物だった」という設定が面白い
個人的に一番面白いのは、単なる記憶喪失ではないところです。
正樹は「過去を忘れた人」ではありません。
むしろ、存在しない可能性のある人生を本物だと思って生きていた人です。
ここには普通の記憶喪失ドラマとは逆の面白さがあります。
記憶を失った主人公なら、本当の過去を取り戻せば元に戻れます。
しかし正樹の場合、本当の過去を取り戻すほど「伊川正樹として生きてきた自分」が崩れていきます。
身体は二宮祐介。
しかし本人には二宮祐介としての人生がありません。
しかも自分の記憶の一部には、岡崎史也という別人の記憶まで混ざっています。
では「自分」とはいったい何なのでしょうか。
この問いが面白いです。
■②真弓=奈々美の展開で一段階深くなった
序盤では、正樹の謎が物語の中心に見えました。
ところが真弓まで別人だったことで、世界の見え方が変わります。
正樹だけが特殊なのではありません。
複数の人間が「別の人生」を与えられている可能性が出てきました。
さらに奈々美の場合、もともとは殺人罪で服役しているはずの人物です。
そこで「記憶を書き換えて犯罪者を別人にしたら、それは更生なのか?」という問題まで出てきます。
単なる謎解きより、かなり倫理的なテーマになってきました。
犯罪を起こした記憶を消し、善良な人物の記憶を与える。
それによって犯罪を起こさなくなったとしても、その人物は本当に「更生した」と言えるのでしょうか。
逆に、それまでの人格を消してしまうなら、刑罰以上に重いことをしているとも考えられます。
こうした問いまで考え始めると、中盤以降のほうが面白く感じる人もいるでしょう。
■③不気味さの作り方がうまい
もう一つ評価したいのが、森沼ネクスタウンの不気味さです。
事件件数ゼロという、本来なら安心できるはずの設定が逆に怖く感じられます。
正樹の周囲にいる人たちも、最初は普通の住人に見えました。
ところが話が進むにつれて、監視する側の人物がいることも分かってきます。
「普通の日常に見えていたものが、実は誰かに管理されているかもしれない」という感覚があります。
派手な殺人事件が連続するタイプのサスペンスではありません。
日常そのものが少しずつ不気味になっていくタイプです。
この雰囲気が好きな人には、かなり相性がいい作品だと思います。
③逆に「面白くない」と感じる理由も分かる
■①謎の仕組みが中盤でかなり見えてしまう
「面白くない」と感じる人の理由として理解できるのが、謎の開示速度です。
第1話では、かなり大きな謎が提示されました。
なぜ妻は正樹を知らないのか。
なぜ別人が正樹として暮らしているのか。
なぜ町全体がおかしいのか。
正樹自身は何者なのか。
これだけ並ぶと、最後まで「巨大なトリック」が隠されている本格ミステリーを期待した人もいるでしょう。
ところが中盤では、記憶が人為的に操作されているという大枠が見えてきます。
そのため「もっと最後まで謎を引っ張ってほしかった」と感じる人がいても不思議ではありません。
▼評価が分かれそうなポイント▼
- 謎の答えが少しずつ出るのでテンポが良い、と感じる人
- 謎をもっと終盤まで隠してほしい、と感じる人
- 仕組みより人物の人生に興味が移って面白くなる人
- 犯人当てを期待していたため物足りなくなる人
これは作品の出来というより、期待しているジャンルとの相性が大きいでしょう。
■②「犯人は誰?」を楽しむ作品ではなさそう
ここまでを見る限り、『マイ・フィクション』は典型的なフーダニット型のミステリーとは少し違います。
「殺人事件の犯人は誰なのか」を最後まで推理する作品ではありません。
また、驚くような犯罪トリックの仕組みを解くことが中心でもありません。
公式にはサスペンス・ラブストーリーと位置づけられています。
そして実際に中盤まで見ると、サスペンスを入口にしながら、かなりヒューマンドラマへ近づいています。
中心にあるのは「誰が犯人なのか」より、「記憶を作り替えられた人間の人生を、本物と呼べるのか」という問題だからです。
この方向転換を面白いと思えるかどうかで評価はかなり変わりそうです。
■③科学設定にリアリティを求めると気になる部分もある
記憶の書き換えという設定についても、好みが分かれそうです。
序盤は「現実に起こりそうな不気味な事件」として見ていた人もいるでしょう。
しかし話が進むと、かなり大胆な科学的設定が物語の中心へ入ってきます。
そのためリアルな犯罪サスペンスを期待していた場合、そこで作品との距離を感じる可能性があります。
逆に、近未来的なSF設定や思考実験が好きなら面白くなる部分です。
重要なのは、記憶改変技術が現実にどこまで可能かという話だけではありません。
作品はその設定を使って、「記憶と人格のどちらが人間を作るのか」というテーマを描こうとしているように見えます。
④『マイ・フィクション』はミステリーよりヒューマンドラマ?
■①本当のテーマは「記憶がなくても愛は残るのか」かもしれない
作品の公式な紹介でも、重要なテーマとして「記憶」と「愛」が示されています。
これは正樹と真弓の関係を見ると分かりやすいです。
正樹が真弓と夫婦だったという人生そのものが、人為的に作られたものだった可能性があります。
では、その期間に正樹が感じた愛情も偽物なのでしょうか。
ここが本作の面白いところです。
思い出の前提が嘘だったとしても、そのとき本人が感じた幸福まで嘘だったとは限りません。
逆に、本来の家族である由梨や賢人との記憶を失っている正樹は、彼らを「本当の家族」と言えるのでしょうか。
戸籍やDNAなら二宮祐介です。
しかし本人の心には、伊川正樹として生きた記憶があります。
この矛盾が、本作のタイトルにもつながっていると考えられます。
■②「偽物の人生でも幸せなら本物なのか」という問い
『マイ・フィクション』というタイトルも、第6話まで見ると印象が変わります。
最初は「誰かが正樹の人生を乗っ取った」という意味にも見えました。
しかし現在は、正樹自身が「作られた人生」を生きていた可能性が高くなっています。
つまり正樹にとっての「マイ=自分」と「フィクション=作られた物語」が同時に成立しています。
作られた記憶。
作られた夫婦。
作られた名前。
それでも本人がそこで本当に泣き、本当に笑い、本当に誰かを愛したなら、その人生をすべて偽物と呼んでいいのでしょうか。
ここまで考えると、本作はかなりヒューマンドラマ寄りです。
謎を解いた瞬間に終わるのではなく、謎が解けたあとに残る人間の感情を描く作品なのかもしれません。
■③玉森裕太の「何を信じればいいのか分からない」主人公も合っている
主人公の正樹は、積極的に事件を解決していく名探偵タイプではありません。
自分の人生そのものが崩れていく当事者です。
そのため、常に戸惑いながら真相へ進んでいきます。
玉森裕太さんの柔らかい雰囲気も、この役には合っていると感じます。
強烈なヒーローではないからこそ、「もし自分だったらどうする?」と考えやすい人物になっています。
また、森川葵さん、宮澤エマさん、野村周平さんなど、正樹を取り巻く人物にもそれぞれ事情があります。
誰か一人だけの謎ではなく、複数の人生が絡み始める中盤から、キャラクタードラマとしての面白さも増しています。
⑤第6話まで見て「今後も見る価値はある?」
■①大きな仕組みが分かっても謎は残っている
「記憶を書き換えていたことが分かったなら、もう見る必要はないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし第6話までで分かったのは、主に「どうやって」という部分です。
「なぜ」という部分はまだ残っています。
なぜ二宮祐介が伊川正樹になったのか。
なぜ岡崎史也の記憶が正樹の中に存在するのか。
なぜ石野奈々美が真弓として生活していたのか。
誰がどこまで計画を動かしているのか。
そして、正樹は最後にどの人生を「自分」として選ぶのか。
これらは第6話時点で完全には決着していません。
そのため謎が全部なくなったわけではありません。
ただ、謎の種類が変わったと考えたほうがよいでしょう。
■②「ラスボス当て」を期待すると評価は変わる
一方、「最後にすべてを操っていた意外な人物が判明する」という展開だけを期待するなら、現時点では何とも言えません。
第6話までの情報だけで、最終的に驚く真犯人が登場しないと断定することもできません。
逆に「必ず大どんでん返しがある」とも言えません。
まだ放送途中だからです。
そのため「このドラマにはラスボスはいない」「最後に驚く仕掛けはない」と現段階で決めてしまうのは早いでしょう。
現在確認できるのは、犯人当てだけを中心に進む作品ではないということです。
終盤でさらに構図が反転する可能性については、今後の放送を待つ必要があります。
■③こんな人には面白い・こんな人には合わないかも
| 面白く感じやすい人 | 物足りなく感じる可能性がある人 |
|---|---|
| 記憶をテーマにした作品が好き | 本格的な犯人当てを期待している |
| SF的な設定が好き | リアルな犯罪ドラマを求めている |
| 人間関係の変化を楽しみたい | 最後まで謎を隠してほしい |
| 考察しながら見るのが好き | 複雑な設定を追うのが苦手 |
| 「自分とは何か」というテーマが好き | テンポの速い事件解決ものが好き |
「面白い・面白くない」の評価が分かれるのは、このジャンルの受け取り方の違いが大きそうです。
⑥まとめ:『マイ・フィクション』は面白い?面白くない?
■①第6話までなら「面白い」と感じる部分は多い
第6話まで見た段階では、個人的には面白い作品だと感じます。
特に面白いのは、序盤と中盤で「知りたいこと」が変わっている点です。
最初は「正樹に何が起きたの?」でした。
しかし現在は「なぜ正樹にそんな人生を与えたの?」へ変化しています。
さらに真弓=奈々美の問題が加わり、「記憶を書き換えれば犯罪者は別人になれるのか」という倫理的なテーマまで広がりました。
単純な謎解きだけではなくなったことを、面白さとして受け取れる人には相性がいいと思います。
■②一方で「思っていたミステリーと違う」という感想も分かる
反対に、面白くないという意見も理解できます。
第1話のインパクトから、本格ミステリーを想像した人は多かったはずです。
「誰が世界を書き換えたのか」「最後に全部ひっくり返るのでは」と期待していると、中盤で科学的な仕組みが見えてきたことを早いと感じるかもしれません。
ただし、まだ最終回を迎えていません。
そのため「もう大きなどんでん返しはない」と決めることもできません。
▼第6話までの評価をまとめると▼
- 序盤の謎の提示はかなり強い
- 中盤から謎の仕組みが徐々に明かされる
- 犯人当てミステリーとして見ると物足りなく感じる可能性がある
- 記憶・人格・愛を描くヒューマンドラマとして見ると面白さが増す
- 記憶改変というSF的な設定への好みで評価が分かれそう
- 最終的な黒幕や結末については、まだ断定できない
■③ここからは「謎の答え」より「正樹が何を選ぶか」に注目
個人的に、今後一番気になるのは黒幕だけではありません。
すべてを知った正樹が、最後に自分を誰だと認めるのかです。
身体だけなら二宮祐介です。
しかし本人が愛してきた人生は伊川正樹としての人生です。
そこには真弓との思い出があります。
一方で、二宮祐介には由梨や賢人という本来の家族がいます。
もし正樹が二宮祐介としての記憶を取り戻したとしても、伊川正樹として過ごした時間まで消えるわけではありません。
では、本物の人生とはどちらなのでしょうか。
記憶を書き換えられて作られた人生なら、その中で生まれた愛情までフィクションなのでしょうか。
ここが『マイ・フィクション』というタイトルにもつながっているように感じます。
だから第6話まで見て「謎がだいぶ分かっちゃった」と感じた人も、もう少し見続ける価値はありそうです。
このドラマの本当の答えは、「何が起きたのか」ではなく、「作られた記憶の中で生きた人生を、本物と呼べるのか」というところにあるのかもしれません。
